住宅を計画する上で重要なのは“空間の形状”ではなく、“どのように住むか”ということだと考えています。
家とは「居る」だけではなく「住む、暮らす」ものです。
どんなに立派な家を建てても、それが住む人の生活に合ったものでなければ、全く住み心地の悪いものになってしまうことでしょう。
広さや間取りなど、空間のボリュームだけではなく、いくつもの要素が集まって“家”というものは造られています。
それらがどのように住む人の生活に関わってくるかを丁寧に考え、提案することで“唯一の”家づくりができると考えています。
窓の大きさや高さによってどのように見え方が変わるか、触れる場所はどんな素材を使うか。
何気ない場所に板を取り付けたらベンチになった。
そこから見える桜がとても綺麗で、お気に入りの場所になった…。
小さな事を丁寧に考え積み重ねることで、その家は住む人に合った、愛着の湧くものになっていくと考えます。
また人が成長し、歳を重ねていくように、家も年月をかけて老いていきます。
私達が提案する家は、決して“メンテナンスフリー”の家ではありません。
むしろ完成した時がその家の始まりで、そこから更に育てていって頂く必要があります。
手間をかけて育てていった家には、何とも言えない艶があります。
それが「生活の記憶」であり、そうして唯一の家になっていくものと考えます。
老いた時、その時になお美しいと思えるように、常日頃から愛着を持って手入れをしていくこと。
その住まい方の提案こそが、私達が最も重要視していることです。