住宅を設計する時、デザインというものは常に考える事項として挙げられます。
しかしここで言うデザインとは、完成した内外観だけのことをいうのではありません。
辞書によれば、“デザイン”とは「生活に必要な製品を製作するにあたり,その材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画」とあります。
見た目の構成だけではなく、何を使い、どのような技術を用い、どのように手を加え、どのように見せるかということ全てが「デザインする」ということだと考えています。
つまり最終的な形になった時に「美しい」と感じるためには、それよりももっと前、設計段階から入念に計画しておく必要があります。
では、美しいと感じるデザインとはどのようなものなのか。
①説明の出来るデザインにする
「なぜそのようなデザインにしたのか」を問われた時に、説明が可能であることを心がけています。
極力、線を排除し、空間のフラットな面を強調したかった、主張しないディテールで、空間のもつ落ち着きを表現したかった、など家によって様々です。
家のテーマとも呼べる幹に則したデザインを行うことによって、空間の統一感が生まれます。
②無理のない納まりを心がける
家は細かな部材の積み重ねで出来ています。
その一つ一つが取り合うところには、必ずディテールが存在します。
家という、毎日人が生活をし、長期に渡って使用する環境におけるディテールは、家の寿命すら左右すると考えます。
無理な納まりをすれば必ず歪みが生じます。
意匠的な見せ方を考えることは当然とし、そのディテールについては無理のない施工が可能なことを心がけています。
③部材ひとつひとつを考える
私達の家づくりでは、可能な限り既製品は使わず、木、鉄、その他の材料を加工して造るようにしています。
現在、市場では多くのパーツが手に入ります。
ドアの枠や巾木なども、たくさんの種類が売られています。
しかし私達はこれらを用いず、一つ一つのパーツについて考え、デザインすることにしています。
職人と打ち合わせを重ねて納めた細部は、全体の印象を大きく変えます。
また細かなところに気を配って「考える」行為をした家には愛着が湧くものです。
美しいデザインとは…
上に挙げたことに気を配ったデザインというものは、必然的に美しいものとなると感じています。
「美しいデザインとは」の問いにそう答えるのは、毎度個々の家に合うデザインを考えるため、明確に提示することが難しいと考えるからです。
怖いのは、無関心であること。
細部にまで気を配って考えることが、家には求められるのではないでしょうか。